ビタミンA

レチノイド

レチノイドについて

レチノール、トレチノイン、レチノイド様々な用語があり分かりづらいため整理していきます。いずれもビタミンAの仲間です。

図にあるようにビタミンAを体内で利用するためにはビタミンAそのものを摂取するか、前駆体を摂取する必要があります。食事から摂取する場合は吸収され血液中に運ばれますが、ビタミンAの大半はレチノール(ビタミンAアルコール)という名称になります。体内で皮下組織に運ばれると酵素の働きによってレチナール(ビタミンAアルデヒド)に変わり、最終的にレチノイン酸に変化します。まとめると、レチノール(ビタミンAアルコール) → レチナール(ビタミンAアルデヒド) → レチノイン酸(トレチノイン、イソトレチノインなど)と変化しています。最終産物のレチノイン酸が持っている生理活性を発揮する化合物はすべてレチノイドと呼ばれます。

一方でカロテンを摂取した場合は一部が必要に応じてレチノールに変化します。ビタミンA(レチノール)は脂溶性で蓄積しやすいですが、上記理由によりカロテンを大量に摂取しても必要に応じて一部がレチノールに変化するだけなのでか上昇になることはありません。残りはカロテノイドとして抗酸化作用を示します。

レチノイドの種類

レチノールレチナール → レチノイン酸トレチノイン、イソトレチノインなど)

このように酸化を経て、主にレチノイン酸として効果を発揮しています。ビタミンAとしての効果の強さはレチノール< レチナール<< レチノイン酸ですトレチノインレチノールの約100倍の生理活性作用をもつとされているので、レチノイン酸医薬品として、レチノールやパルミチン酸を結合させたパルミチン酸レチノール医薬部外品、化粧品に使用されています。

パルミチン酸レチノール<酢酸レチノール<レチノールレチナールレチノイン酸

レチノールにパルミチン酸や酢酸などを付加している理由はレチノールやレチノイン酸よりも余計なものを足すことで純粋なビタミンA成分が少なくなることで副作用を軽減できています。しかしビタミンAの効果を逆に減らしてしまう上、余計な成分で逆に肌荒れしてしまうため、どちらも一長一短です。


レチノイン酸はビタミンAのカルボン酸誘導体でいくつかの立体異性体が存在します。

trans型のトレチノイン〔atRA (All-Trans-Retinoic Acid)〕
cis型のアリトレチノイン(9-cis retinoic acid)
cis型のイソトレチノイン(13-cis retinoic acid)


合成レチノイドにはadapalene, Differin(CD271)

レチノイドの適応疾患

【海外での適応】
ニキビ治療にイソトレチノインの内服と外用
ニキビ治療にadapalene, Differin

【日本での適応】
乾癬の内服治療薬としてetretinate(チガソンTegison)
前骨髄球性白血病の内服治療薬としてatRA(ベサノイドVesanoid)
ニキビ治療にadapalene, Differin

トレチノインの外用薬

シミ・ニキビ・しわ対策、肌のハリや皮膚の再生

レチノイドは皮膚においてはレチノイン酸として細胞の分化の調節を担っていることが知られています。レチノイドの生理活性作用が最も強いレチノイン酸と外用する場合は以下のことが期待されます。

トレチノインを外用することにより、短期的には表皮のresurfacing効果皮脂分泌抑制によりにきびに効果があるとともに、ハイドロキノンなどの美白剤と併用することでしみなどのメラニン色素性疾患に効果を表します。長期的には、真皮におけるコラーゲンの産生促進により肌のハリや細かいシワに効果を表します。

引用;吉村浩太郎.レチノインに酸療法とは.1998;cosmetic medicine in japan.

レチノールの外用薬

日本で外用剤として認可されているレチノイドレチノール酢酸レチノールパルミチン酸レチノールがあります。しかしこれらの成分では副作用は特に見られませんが、薬理作用が小さく(トレチノインの300分の1程度と言われています)、トレチノインのような効果はあまり期待できません。

しわ対策

本邦では資生堂によりシワ改善有効成分として医薬部外品に厚生労働省から承認を受けています。レチノールにはいくつか種類があり、薬理効果が高いものからレチノール酢酸レチノールパルミチン酸レチノールがあります。医薬部外品としてのレチノール含有化粧品の効能は美白ではなく「シワを改善する」という効能の許可を受けたものです。

ターンオーバー亢進作用

レチノールがケラチノサイトにおいてヘパリン結合性EGF様成長因子(HB-EGF:Heparin Binding Epidermal Growth Factor) mRNAの発現亢進を行うことが報告されています。これによりケラチノサイトが分裂増殖しターンオーバーが亢進します。

引用;Differential expression of heparin-binding EGF-like growth factor (HB-EGF) mRNA in normal human keratinocytes induced by a variety of natural and synthetic retinoids

ヒアルロン酸・コラーゲン産生促進

目尻のシワ改善の有用性を認めた試験では、レチノールを連用することにより真皮内のヒアルロン酸やコラーゲンが増大することが認められています。レチノールの抗シワ作用は、ターンオーバーの亢進や真皮内成分の産生促進機序が複合的に作用した結果であると考えられます。

引用;大田 正弘.医薬部外品・有効成分レチノールによる改善効果;Fragrance Journal,2021(49)(5),38-45.

まとめ

レチノイドとりわけトレチノインは、角質のターンオーバーを促進して、古い角質を剥がれやすくし、毛穴詰まりを予防、皮脂の分泌を抑制することでニキビをできにくくすることができます。さらに真皮のコラーゲン生成を促すため、たるみ毛穴、目元の小じわの改善も期待できます。レチノールでも程度は弱いものの上記はある程度期待できますが、やはりトレチノインは、皮膚のターンオーバーを促し、メラニンを排出させるためシミ治療にも使える点が圧倒的な違いでしょう。