脱毛

脱毛のよくある質問

脱毛の基本

①白髪以外の毛は脱毛できる
②脱毛は毛の部位、毛周期に合わせて間隔を調整して行うことが大切

毛周期ってなに?

毛周期について

毛には毛周期があります
休止期:毛を産生しないで「止まっている」状態
成長期:毛をどんどん産生している時期
退行:毛の産生をやめてだんだん休止期に移行する時期

毛の部位によって休止期と成長期の期間が異なります。成長期の長い頭髪や髭は長く伸びますが成長期の短い毛は長く伸びることができません。休止期が長い毛は反応する毛が少ないので脱毛するのに時間がかかります。脱毛はこのように毛の部位により異なりますし1本1本も成長しているか休んでいるか分からないため、平均的に2ヶ月間隔を空けて脱毛すれば、休止期を避け効率よく脱毛できると思います。

葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:29:135

どうしたら毛が生えなくなるのか?

毛にレーザーを当てた後は次のどれか1つだけの反応を示します。
①何も起こらない:与えるエネルギーが小さすぎると毛は何も反応しない。
②毛の一部が焼けるだけ:皮膚から出ている毛幹だけ照射されてしまえば毛の成長は止まらない。
③ショックロス:毛根は何か大きなショックを受けると休止期に入ってしまう。癌の化学療法を受けると脱毛するのはこれが原因である。毛根自体は損傷を受けていないので、6~9ヶ月後に再び成長期に入って発毛する。一旦脱毛が成功したように見えて半年から1年後にまた戻ってしまうのはこれが原因である。
④毛根やバルジ領域の熱破壊(永久脱毛):熱で破壊されると永久に毛の産生はしない。
➡️全ての毛が④の反応を示すまで脱毛を繰り返すことで永久脱毛を目指します。

葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:36:135

バルジ領域について

皮脂腺と毛包上皮性幹細胞が存在する領域。毛包上から1/3辺りに位置する。

一度脱毛した毛はもう生えないのか?

破壊された毛根からは二度と毛は生えないです。しかし、見かけ上脱毛に成功したように見える毛がショックロスによって休止期に入っていた場合は、6~12ヶ月後に生え始めます。

ショックロスとは?

毛根は何か大きなショックを受けると休止期に入ります。癌の化学療法を受けると脱毛するのはこれが原因です。毛根自体に損傷を受けていないので、6~9ヶ月後に再び成長期に入って発毛します。一旦脱毛が成功したように見えて半年から1年後にまた戻ってしまうのはこれが原因です。

引用;葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:41:135

レーザー脱毛で毛は細くなるのか?

結論はなりません。見かけ上細く見えているのは、毛の密度が低くなっている(本数が減っている)からです。1本の毛が細くなるためには間葉系幹細胞である毛母細胞上皮系幹細胞であるバルジ領域の毛幹細胞が両方うまく減少する必要がありレーザー照射により均一に減少させることは現実的に不可能です。さらに太い毛と細い毛では太い毛の方がレーザーを当てた際に発生する熱量が多いため抜けやすく、太い毛だけが死んで細い毛が残った結果を見ているから細く見えているに過ぎません。以上の理由で脱毛で均等に薄くするようなことはできませんのでご注意ください!

引用;https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33568688/
葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:37-39:135

脱毛レーザーの種類

主に3種類あり波長の低い順に説明していきます。
①Alex(アレキサンドライトレーザー)
②Diode(ダイオードレーザー、半導体レーザー)
③Nd:YAG(ネオジウム・ヤグレーザー)

①Alex
波長が755nmありメラニンの吸収率が高く低めのフルエンス(出力密度)で脱毛効果が得られるので比較的痛みが少ないです。色素沈着した皮膚に弱いので表皮焼けのリスクがあります。さらに波長が短いのでやや深達性に乏しいです。男性のひげなど毛根が非常に深いところには効き目が弱いです。


②Diode(ダイオードレーザー、半導体レーザー)
波長が810/940nmあり赤外線レーザーです。メラニンの選択性はAlexより低いですがYAGよりは高く、痛みも中間です。深達性はAlexより深いです。全てが中間で蓄熱脱毛が可能です。


③Nd:YAG(ネオジウム・ヤグレーザー)
波長が1064nmあり赤外線レーザーです。色素沈着の強い皮膚やアフリカ系の人種の方に有効です、というよりこれしか使えないです。メラニンの選択性が低いので十分な発熱量を得るためには高めのフルエンス(出力密度)にしないといけないため痛みが強いです。下記に挙げる部位など難しいところに有効です。表皮焼けしにくいですが真皮熱傷を起こしやすいです(瘢痕化になる可能性)。低めのフルエンスから慎重に上げていく必要があります。
・男性のひげ
・色素沈着したVIO
・硬毛化した毛
・女性の口周り
・大腿・上腕の太い毛
・背中の細い毛

引用;葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:72-81:135

蓄熱式脱毛とは何か?

正式な定義はありません。短い間隔で連射するので熱が溜まっていく仕組みのことを言います。蓄熱式ではない脱毛は1発のパルスレーザーで毛に熱を与えて、毛根の細胞を熱壊死させます。蓄熱式はそれを機関銃のように何発かのレーザーを連射してエネルギーを与え、毛根を破壊するようなものです。何発かレーザーを重ねてエネルギーを与えるので1発あたりのエネルギーは少なくて済むので痛みは少ないです。ただし2発3発と照射している頃には1発目の熱エネルギーはどんどん周囲に逃げていくので投入する合計のエネルギー量はかなり大きくなり、周囲組織の熱損傷は同等以上になる可能性があります。術者の手加減により良くも悪くもなり得ます。簡単に言うと理論上は痛みが少ないのは蓄熱式だが、施術者次第であり熱破壊式で麻酔をするのが一番いいです。

引用;葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:68-69:135

蓄熱式脱毛でDiodeレーザーを使用する理由

おそらく波長とメラニン選択性の関係でDiodeが向いているのでしょう。最近はAlex/YAG mixでも行っているクリニックもあります。Diodeレーザーやmixではメラニン選択性が低く波長がやや短いので、色素が無く、浅い位置にある毛幹細胞(バルジ領域)がレーザー照射されます。また何発かのレーザーを連射してエネルギーを与える治療であるため、痛みも強さも中間であるDiodeが選択されているのでしょう。ただし上記に記載した通り合計のエネルギー量はかなり大きくなり、周囲組織の熱損傷は同等以上になる可能性があります。

光脱毛とレーザー脱毛の違い

結論は波長と出力が違います。レーザーは単一波長の光ですがフラッシュライトの光は複数の波長のスペクトラムの合算です。光としては全く別物です。どちらもメラニンに吸収されて熱を発して効果を出す点は同じです。光としての透過性や減衰率などが多少異なるくらいです。

※光治療器の心臓部分であるランプは経時的に劣化していくので出力が低下していきます。「今日の10Jは2年後には5Jしか出せていない」なんてことがあり得ます。出力をモニターし毎回補正していればその心配はありませんが安い光治療器にはそういった装置はついていませんのでご注意ください。光治療器は出力が低下するので熱傷のリスクは下がりますがその分脱毛効果も下がります。

引用;葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:82-83:135

脱毛前のよくある疑問について

毛抜きやエステ脱毛などで抜いたら毛は生えなくなるのか?

原則的には減らないですが少し減る場合もあります。毛を引き抜くと一番結合の弱い毛幹と毛根の接着部分が剥がれて毛幹だけが抜けます。その場合100%完全に毛は再生します。しかし、何かのはずみで毛幹と一緒に毛根細胞の一部も取れる場合があるので、その場合には毛根に損傷が加わります。その結果、毛根が破壊される可能性も少しありますが確率は低いです。別の問題として毛を引き抜くことは角質層や毛根にダメージを与え、毛嚢炎・皮膚炎・色素沈着のリスクになるのでおすすめはしないです。きちんとレーザー脱毛をすることが最適です。

白髪は脱毛できるのか?

結論は光脱毛やレーザー脱毛ではできません。ニードル脱毛のみ可能です。

光脱毛やレーザー脱毛はターゲットがメラニン色素であるため、白髪は反応しません。黒髪の元となる色素幹細胞(バルジ領域)が加齢やストレスで枯渇すると色素細胞が不足し白髪になることが明らかになっています。したがって白髪の場合はニードル脱毛で一つ一つ毛根に直接針を刺し電流を流すことで毛根を破壊すれば脱毛は可能です。

引用;https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15618488/

針脱毛:絶縁針を毛根に差し込んで、通電する脱毛方式であり、レーザー脱毛が登場する直前まで唯一の永久減毛の手段でした。しかし施術時間が非常に長く、費用も高いことから脱毛機が開発されてからは特定の脱毛以外では使用しなくなりました。特定の脱毛というのはレーザーや光が当てられない人や当てられない部位の脱毛、母斑の剛毛除去などです。

毛の長さは脱毛に影響するのか?

結論は影響しません。
つまり長い毛であっても脱毛に回数が非常にかかるとか痛みが強いということにはなりません。髭のような太い毛は毛根も太く、産毛のような細い毛は毛根も細くなります。毛の太さと毛根の大きさは比例します。しかし長さは毛の成長期の長さによるものなので毛根の形態と関係ありません。

皮膚の色の濃さは脱毛に影響するのか?

結論は影響します。
理由は肌の色が黒いと表皮に吸収されるエネルギーが多くなり、真皮の毛根に届くエネルギーが減少する(つまり脱毛効果は少なくなる)と同時に、表皮焼けのリスクが高くなります。対策として長波長のYAGレーザー(1064nm)を使用し、できるだけ長めの照射時間幅を用いるなど工夫します。

脱毛時の麻酔について

麻酔を使用してもいいと思いますが気休め程度と思ってください。理由は外用麻酔薬、つまり塗る麻酔や貼る麻酔は真皮までの痛みには効きますが、男性の髭のように太くて毛根が皮下脂肪まで達しているようなケースでは効果はあまり期待できないからです。さらに例えば外用薬のエムラクリームなどは上限が10g(100㎠程度カバー)と決まっているので広範囲の脱毛には麻酔できないからです。どうしても痛みに耐えられない場合は局所麻酔(リドカイン塩酸塩)、注射での麻酔をおすすめします。

脱毛前に剃毛は必要か?

剃毛は必要です。理由は毛が伸びているとその毛が焼けて表皮熱傷の原因となるからです。剃毛はひげ以外であれば毛が生えるスピードは遅いため2日前でいいです。髭は前日または当日に剃毛した方がいいです。理由は直前に剃毛してしまうと毛の生えている範囲や毛の太さ、密度が分かりづらくなるからです。ただあまりこだわらなくてもいいです。毛を剃る場合は皮膚表層の損傷を避けるために電気シェーバーをおすすめします。

治療回数や間隔はどうすればいいか?

一旦なくなった毛が2ヶ月くらいしたらまた生えてくるので、ある程度生えてきたタイミングで脱毛していけばいいと思います。回数について、何回で薄くなるかは予想できますが、その薄くなった状態を「かなり薄くなった」と感じるか「まだ残っている」と感じるかは感じ方の違いになります。毛の濃さ、部位、脱毛経験、どの程度脱毛したいかが人それぞれ異なること、毛周期は部位により異なること、1本1本の毛によっても異なるので全ての毛が生えそろうことはないため何回で永久減毛できるかは誰にも分かりません。

目安としては「3~5回で毛が減ってきた感じ」、「5回~10回で自己処理が楽になる」、10回以上で完全になくなる方が多い印象です。1回で約20%程脱毛効果があります。

アートメイク・タトゥーをしていても脱毛はできるか?

避けて照射することは可能ですがそれでも変色する可能性があります。脱毛クリニックによってはアートメイクの存在や知識を知らないスタッフもいるので、申告を忘れずにしてください。眉周りとリップのアートメイクが変色した場合の除去・修正は非常に難しいです。個人的にはタトゥー周りなら5cm、まつ毛・眉周りなら1cm空けて照射した方がいいと思います。ただし眉周り1cmは相当眉毛から離れているので、本来は1cmが理想ですがリスクを許容して施術者が眉毛を正確にガードできれる環境が整っていれば5mm程度ならいいと思います(5mmの根拠はありません)。なぜ1cmは離したほうがいいかについては下記図のように眉毛は頭側に生えているからです。

引用;葛西 健一郎.基礎から学ぼう 医療レーザー脱毛入門.2021:vol.1:64-66:135

目周りは照射できるのか?

医学的にはおすすめしません。理由は脱毛レーザーの波長は目の構造物である硝子体、水晶体を透過し、網膜・脈絡膜に吸収される可能性があるからです。眼球にレーザーが当たった場合は視力障害を来す可能性があります。脱毛レーザーはある程度の深さまでは透過するので、目を閉じた状態で照射しても眼瞼を透過して眼球に障害を与える可能性があります。顔の脱毛では必ずアイシールドをつけて照射しますので外さないでください。ただし元々毛が濃い場合目周りだけ脱毛しないと逆に不自然に見えたりしてしまうなどやむを得ない場合はクリニックによっては皮膚をひっぱり骨上であれば照射をしています。リスクを承知していれば個人的には骨上であれば照射してもいいと思います。

引用;https://www.imaios.com/jp/e-Anatomy/node_49398/node_278217

アトピー性皮膚炎の方の脱毛

アトピー性皮膚炎では積極的に脱毛をするべきです。理由は脱毛により剃毛の回数が減り、剃毛刺激による皮膚炎の悪化を防ぐこと、さらにレーザーにより痒みの伝導繊維であるC繊維を脱分極し痒みが抑制されるからです。

引用;山田裕道. 皮膚科治療に役立つ脱毛レーザーを用いた治療レーザー脱毛でアトピー性皮膚炎もよくなる? Vis Dermatology 2004; 7:446-9.