フラクショナルレーザーができるまで
1990年代まではCO2レーザーなどを使用することで老化した皮膚を除去し、新しい健康な皮膚を形成させるレーザーリサーフェイシング (laser resurfacing) 法がありました。ただし炎症後色素沈着や瘢痕形成などの合併症のリスクが高かったのです。2004年にMansteinらは微細なレーザーを1cm²あたり数百から数千発照射するというフラクショナルモードという概念を形成しました。剥皮的フラクショナルモードと非剥皮的フラクショナルモードの2種類があり、いずれも従来の面状に剥皮する炭酸ガスレーザーと比べてダウンタイムと合併症が少なくなりました。
フラクショナルレーザーの種類
非剥皮的フラクショナルレーザー(凝固型)
初期に開発されたものはNAFL(Non-ablative fractional laser)と呼ばれ、照射後に熱変性作用によって真皮内の比較的浅い部位に円柱状の凝固物を多数形成します。
ピコ秒レーザーはこちらのNAFLに分類され組織の凝固のみで上皮化が早く、疼痛や色素沈着などの合併症は少ないです。その分AFL(CO2フラクショナルレーザーなど)に比較して瘢痕改善率は低いので浅いタイプのニキビ跡やrejuvenationが目的となります。
引用;Acne scarring: a classification system and review of treatment options
引用;エビデンスに基づく美容皮膚科医療.2019;vol1.106:247
引用;Beauty #26.2021;Vol.4.No.1;67:85
剥皮的フラクショナルレーザー(蒸散型)
AFL(ablative fractional laser)と呼ばれ、レーザー光が照射された部分は針で多数の小孔を空けたように蒸散され、円柱状に中空になるように皮膚組織を切り取っていきます。周囲は円筒形の凝固も生じています。
引用;エビデンスに基づく美容皮膚科医療.2019;vol1.106:247
引用;Beauty #26.2021;Vol.4.No.1;67:85
ablative laserであるCO2レーザーを用いた治療では浅いicepick scarとrolling scarにおいて有意に改善が観察されていますが、深いicepick scarやboxcar scarでは外見上の改善は乏しいです。
引用;鶴町宗大.Beauty #26.2021;Vol.4.No.1;69:85
フラクショナルレーザーの効果
真皮コラーゲン線維やエラスチン線維の新生、真皮乳頭層におけるエラスチン繊維のネットワークの回復などが報告されています。AFLを使用した場合は単に組織を凝固するNAFLと異なり蒸散された中空状のlaser holeが閉じる際に生じるskin tightening効果が加わるので、真皮や表皮でより強力な皮膚組織の再構築が進むことが予想され、痤瘡瘢痕の改善率や患者満足度が高いことが報告されています。
フラクショナルレーザーで生じる組織の再構築は、真皮においては痛んだ組織をレーザー光で蒸散、もしくは凝固させて取り除いた後に、その周囲からコラーゲン、エラスチン、プロテオグリカンなどの新生を促していきます。表皮においては照射1ヶ月後から角層水分量、皮膚粘弾性の改善が認められます。
フラクショナルレーザーによるニキビ痕改善機序について
引用;鶴町宗大.Beauty #26.2021;Vol.4.No.1;69:85
どのタイプの萎縮性瘢痕にもCO2フラクショナルが有効
引用;Beauty #26.2021;Vol.4.No.1;70:85
照射のしかたによる改善率
High fluency+low density>low fluence+high density
施術間隔
CO2FLSRで1ヶ月毎で2回と3ヶ月毎で2回施術しても改善率の差はなかった。
ダウンタイムと副作用
照射直後〜翌日:蕁麻疹様紅斑
〜1週間前後 :多数の微細な痂皮(かさぶた)
1ヶ月〜半年 :炎症後色素沈着
副作用:レーザー瘢痕形成