関連項目
ニキビについて
ニキビは肉眼的には目に見えない微小面皰から始まります。面皰とは毛穴が角栓で詰まった状態です。微小面皰とは表皮には全く異常はなく、顕微鏡レベルで毛穴の角化が認められる状態です。その後、肉眼的に見える面皰(非炎症性皮疹)に移行します。以下のように炎症が伴えば紅色丘疹へ、さらに進行すれば膿疱へ進行していきます。紅色丘疹や膿疱が軽快した後も炎症後色素沈着が残存します。
面皰の原因
①アンドロゲンによる脂腺細胞の脂腺分泌亢進
→脂腺分泌物が充満する
※アンドロゲンの量が増える原因はコレステロール過多となるような食事摂取、ホルモンバランスが挙げられます。
②アンドロゲンによる毛包漏斗部の角化角栓形成
男性ホルモン・アンドロゲン刺激
→線維芽細胞が成長因子放出
→毛包漏斗部の角化細胞の異常角化
→角栓形成
西嶋攝子:Visual Dermatology,2(3),272‒275,2003
※女性の体内でも男性ホルモンが作られています。血液内のコレステロールが原料となり男性ホルモンに変換、後に女性ホルモンに変換されます。
(引用;病気が見えるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌)
ニキビの炎症ができるメカニズム
脂質分解能を持つ嫌気性菌であるアクネ桿菌の増殖
様々な要因で皮脂の分泌量が過剰に増えることで、毛穴開口部の角層が厚く硬くなって毛穴を塞ぐことで酸素が少なく栄養が多いというアクネ菌にとって理想的な環境になり、アクネ菌が過剰に増殖することが知られています。アクネ菌が増殖するメカニズムとしては、アクネ菌がリパーゼを分泌しトリグリセリドを分解することによって生じる脂肪酸の一種であるオレイン酸が毛穴開口部の角層を厚く硬くしています。
アクネ菌は、過剰に増殖しなければニキビの原因菌になりませんが、皮脂の分泌量が増えて何かの理由で毛穴が塞がり過剰に増殖すると、増殖したアクネ菌の数に比例して分泌されるリパーゼによって産生された過剰な脂肪酸や増殖した菌体の成分が毛穴に炎症を引き起こすことからニキビの発生から悪化の要因であると考えられています。
アクネ菌は本来は皮膚を弱酸性に保つために重要な存在です。アクネ菌は嫌気性菌であり、酸素がある環境ではほとんど増殖できないため、毛穴や皮脂腺に存在しています。皮脂分解酵素であるリパーゼを分泌し、皮脂の構成成分であるトリグリセリドを脂肪酸とグリセリンに分解することによって皮膚を弱酸性に保ち、黄色ブドウ球菌など病原性の強い細菌の増殖を抑制する役割を担っています。
引用;清水 宏.あたらしい皮膚科学.2011;vol.2:343:589.
炎症反応<自然免疫>
遊離脂肪酸とアクネ桿菌(グラム陰性菌)からNK細胞由来のIFN-γが誘導されマクロファージが活性化します。マクロファージの活性化のプロセスで各種転写因子も誘導されます。
引用;Abul K,et al.分子細胞免疫学.2018;vol.9:89:578.
好中球やマクロファージが反応し組織への遊走、異物肉芽種反応、脂腺性毛包破壊が起こります。その際は角化細胞やマクロファージなどの細胞表面に存在するTLR2(Toll like receptor 2)が関わります。
引用;Abul K,et al.分子細胞免疫学.2018;vol.9:65:578.
TLR2を介して細胞内シグナル伝達を経て核内の転写因子を活性化させます。痤瘡に関連する転写因子は大きくAP-1とNF-κBがあり、それぞれ下流の遺伝子を発現させます。AP-1が痤瘡の炎症、NF-κBが痤瘡瘢痕の形成に関わっています。
AP-1からは炎症性サイトカインであるTNFα、IL-1β、IL-8などのサイトカインの転写を促進し、これらが細胞外に放出されることで好中球の遊走や活性化につながりますさらにこれらのサイトカインは自己の受容体を介してオートクリン(無限ループ)として細胞を活性化させます。
NF-κBは細菌壁破壊に役に立つマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の転写を活性化させ、MMP1,3,9などを放出させます。好中球からもMMP8が放出されコラーゲンやグリコサミノグリカンを含む細胞外マトリックスを分解し、コラーゲン・エラスチンの量を減少していきます。生体はこれに対して修復を試みますが修復量が不十分であれば萎縮性瘢痕を生じ、修復が過剰であれば肥厚性瘢痕を生じます。
引用;Abul K,et al.分子細胞免疫学.2018;vol.9:65:578.
引用;大塚 藤男.皮膚科学.2016:vol.10:77:968
まとめ
ニキビは色々な理由で男性ホルモン過多になり、毛穴に皮脂が詰まることから始まります。
つまり第一段階では皮膚常在菌(→についてはこちら)であるアクネ菌は、アクネ菌の酵素であるリパーゼが、皮脂を遊離脂肪酸に分解し、この遊離脂肪酸の増加により毛穴が閉塞します。第二段階では、毛穴が塞がれたことにより内部に皮脂が詰まった状態になります。それにより毛穴に生息しているアクネ菌が、皮脂を栄養源として更に増殖します。第三段階では遊離脂肪酸、アクネ菌から炎症物質が産生され異物反応を止めようと自然免疫が誘導、好中球による戦いでさらなる炎症を起こしていきます。この戦いが激しいほど跡地はひどくクレーター、肥厚性瘢痕・ケロイドまで発展してしまうのです。
炎症期のニキビについての治療は確立してきましたが、ニキビ痕についての治療はまだ確立しておらず、元の皮膚まで戻すことは不可能です。したがって正しく、早く治療すること、予防することがいかに大切かを理解していただきたいです。
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ニキビ用化粧品では、アクネ菌に対する殺菌効果や患部への抗炎症効果によるアプローチが主流とされています。ただ、それを目的として発売されたニキビ用化粧品に、アクネ菌を増殖させてしまう成分が含まれていることがあります。サティス製薬ではアクネ菌を増殖させやすい化粧品の成分について下記を報告していました。グリセリン、D(+)グルコース、D-ソルビトールは高い資化性を示し、特にグリセリンは通常の増加率よりも約4倍の増殖を示しました。
やさしく!こすらない!すすぎすぎない!
クレンジングはたっぷりした量を肌に優しくなじませ、優しく数回洗い流します。洗顔はよく泡立てた石鹸で手のひら全体で泡を転がすように顔全体に優しくなじませます。すすぎは手のひら全体にぬるま湯をため、顔全体にぬるま湯をさっとかけるように流し、泡がなくなったら終了とします。すすぎ回数は10回程度でいいです。保湿については化粧水は手のひら全体を使用して、顔全体に優しくなじませるように塗ります。強くこすりつけたり押し込んだりしないようにしてください。乳液や美容液、クリームはニキビを避けて乾燥している部分に使用してください。
ニキビ予防
ビタミンC誘導体、アゼライン酸、グリコール酸、過酸化ベンゾイル