エクソソーム療法

エクソソーム療法

エクソソームとは

エクソソームは生体の幹細胞から分泌される30〜100nmの小胞体で細胞間の情報伝達を担っています。幹細胞から分泌される小胞の一つに過ぎません。

引用;エクソソームとmiRNA.東京医科大学 医学総合研究所 分子腫瘍研究部門

引用;buwellness

エクソソームについて

近年エクソソームが再生医療の分野で話題となっていますが、エクソソーム自体は30年ほど前から発見されていました。しかしその機能については不明な点が多かったのです。2008年にエクソソーム内にmRNAやmiRNA(miRNAは18-22塩基の小分子RNAの一種で、細胞内でmRNAと結合してその転写を制御する)を含む核酸物質が内包されて他の細胞へと受け渡されている可能性が示唆されてきました。研究が進み細胞の分化・老化や免疫系の制御などに関与していることが明らかになっています。元々幹細胞の機能として考えられていたものが、実はエクソソームであった可能性があるのです。エクソソームについては現状下記のように考えらえています。

  • 幹細胞培養液中の0.5%に相当する
  • 成長因子、抗炎症性サイトカイン、組織修復因子、遺伝情報が含まれている
  • 別の細胞に運搬されることで生理的・機能的変化を起こす
  • 分化能が証明されており、がん化や拒絶反応のリスクが低い
  • エクソソームは他人の脂肪や歯髄由来で大量に培養できるメリットがある
  • 脂肪組織由来なので骨髄から得るより大量に摂取が可能

幹細胞との違いは幹細胞は炎症性サイトカインなど余計なものが含まれているがエクソソームには含まれていない、幹細胞は自己組織から採取しないといけないため、大量に採取することは困難です。

美容治療での応用

BU Wellness&MedSpaの研究では以下を報告しています。

  • 皮膚角質層の水分保持量の増加
  • アレルギーに関するサイトカイン(IgE・好酸球・IL-4/23/31・TNF-α)の減少
  • 免疫抑制作用/抗炎症作用はステロイド投与による効果に近いレベルを示した
  • エクソソームが皮膚線維芽細胞に取り込まれるとコラーゲン生成が6倍まで増加
  • エクソソームが皮膚線維芽細胞に取り込まれると細胞増殖は最大80%増加

引用;buwellness

幹細胞エクソソーム業界で世界4大企業の1つであるExoCoBio Inc.は、脂肪幹細胞培養液から分離したエクソソーム「ExoSCRT(TM)」を使うことで皮膚炎の予防、改善ができることを証明する特許(登録番号 6970459)を日本国特許庁から取得しています。具体的には皮膚炎の主な原因である炎症性サイトカインの生成を抑制すること、セラミドの生合成を促進することが報告されています。

引用;Exosomes from Human Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells Promote Epidermal Barrier Repair by Inducing de Novo Synthesis of Ceramides in Atopic Dermatitis

ExoCoBioは2018年、Stem Cell Research & Therapy誌に、エクソソームExoSCRT(TM)が表面マーカー(CD9、CD63、CD81)に対する抗体でアトピー性皮膚炎を改善したと報告しています。

引用;Exosomes derived from human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells alleviate atopic dermatitis

幹細胞との違い

エクソソームは投与してから即時に生体内に利用されるものの蓄積されることはないため、連日投与も可能とされています。一方で幹細胞の局所投与では例えば関節内投与などする場合、徐放剤のように幹細胞が徐々にエクソソームを分泌して時間をかけて作用していく点が違います。

まとめ

幹細胞が行っていたと考えられていた創傷治癒や炎症抑制効果、細胞再生等は実は幹細胞内のエクソソームという小胞体が担っている可能性が示唆されています。幹細胞と違い余計なサイトカインを除去し、ドナーヒト脂肪組織由来の間葉系幹細胞由来のエクソソームは安全に大量に培養することを可能としています。整形外科、脳神経外科領域だけでなく、美容治療にも応用されてきており、マイクロニードリング治療でダウンタイムの軽減を行いながら、年齢と共に減少する酵素や線維芽細胞などの増殖、セラミドの生成、角質水分量保持能力を高めるなどに応用されてきています。