グルタチオン

グルタチオン

グルタチオンは抗酸化作用とチロシナーゼ阻害作用によって、老化予防や美白などの美容目的で使用されています。

グルタチオンについて

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの三つのアミノ酸が結合したペプチドで、ヒトの細胞内にも多く含まれています。自分自身の細胞内で作り出すという意味でビタミンCなどの抗酸化作用のある物質とは大きく異なります。

抗酸化作用

グルタチオンには、その抗酸化作用により活性酸素の働きを妨げたり、過酸化脂質の生成を抑制して、皮膚老化、生活習慣病などの予防が期待されています。グルタチオンのSH基で過酸化物質や活性酸素を還元することで抗酸化作用を示しています。

還元型グルタチオンとして、グルタチオンペルオキシダーゼと共に過酸化水素を分解しています。グルタチオンが活性酸素種を除去すると自身が酸化されますが、グルタチオンレダクターゼ(GSHレダクターゼ)とNADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)により再度還元されます。

フェオメラニンへの誘導促進

メラニンの生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに律速酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます。ドーパキノンは、システイン(Cysteine)またはグルタチオン(GSH)存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はドーパクロムまで変化し、そこからDHI(5,6-dihydroxyindole)に変化する合成経路と、TRP-2(tyrosinaserelated protein-2)およびTRP-1(tyrosinaserelated protein-1)と反応する合成経路の2つの経路から茶褐色-黒色のユウメラニンに合成されることが知られています。グルタチオンは白人のメラニンに多いフェオメラニンへの誘導を行うとされています。

引用; Modulating skin colour: role of the thioredoxin and glutathione systems in regulating melanogenesis

肝庇護作用

アルコール性肝障害はGST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)の遺伝変異に関連していることからグルタチオンが肝庇護に役立つ可能性があると報告されています。

引用;Meta-analysis: glutathione-S-transferase allelic variants are associated with alcoholic liver disease

グルタチオンで色白になれるのか?

肌や髪の色素を決定するものはメラニンです。メラニンはユーメラニンとフェオメラニンの2種類に分かれます。フェオメラニンは黄色~赤色のメラニンユーメラニンは黒褐色のメラニンです。肌の色はこの2種類の比率で決まります。色素は遺伝でほぼこのメラニンの割合が決まっているため、白人はフェオメラニンが多い傾向で黒人はユーメラニンが多い傾向となります。グルタチオンは、メラノサイト内で黒褐色のユーメラニンから黄色~赤色のフェオメラニンへ誘導することで色素沈着を予防することができるとされています。

【結論】元の地肌より肌を白くすることはできません。これは肌の元の色には上記2種類のメラニンの比率で決まるからです。もしかしたらユーメラニンが生成されないようにグルタチオンを間髪入れずに入れ続けたらなるのかもしれませんが、現実的ではありません。しかし本来の肌の色にまでなら白くすることはできます。これは生まれたばかりの赤ちゃんは紫外線に当たっていないので今の自分よりは色白ですよね。では本来の肌の色とは何か、それは二の腕の内側を見てください。おそらく紫外線の影響を最も受けていないと思われる部位です。ここまでの色なら近づくことはできそうです。

グルタチオンのエビデンス

グルタチオンは世界中で点滴やサプリメントとして使用されている割には、エビデンスはありません。特に経口摂取した場合については効果が証明されていません。少なくともグルタチオンはもともと生体内にある物質であることから安全性も高く、アメリカのFDAではも一般に安全が認められるレベルとして、サプリメントとして認可されています。グルタチオンよりも古くから利用されているビタミンC点滴はある程度検証されていますが、美容分野での使用に限られるグルタチオンの使用に関して大規模臨床試験が行われることはほとんどないため、エビデンスを求めること自体が難しいことも言えます。

まとめ

グルタチオンは内服、点滴のいずれもはっきりとしたエビデンスはありません。しかし一部の方に美白効果を認めていることや、アルコール性肝障害の方の肝庇護薬として効果が期待できることなどは否定できません。また美白効果も自身の元の肌程度までなら色素を薄くすることは可能なのかもしれません。治療を行うとしてもbioavailability の観点から考えても点滴の方が良さそうですがどれくらいの量が適量なのかも検討が必要です。