ビタミンC

高濃度ビタミンC点滴

高濃度ビタミンC点滴

ビタミンC(内服やアスコルビン酸の通常量の点滴)の効能以外にもがんの予防としても注目を集めています。

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がん治療としての研究

がん治療に高濃度ビタミンCが使用されたのは、1970年代のCameronらによるものでした 1)。その後がん治療の補助としてビタミンCを使用することで生存時間が延長されたと発表されました2)。一方で1970年代後半から1980年代初頭にかけて、Moertelらは、進行がん患者に高濃度ビタミンC療法(HAAT)を導入したが失敗しました3)。その後、ビタミンC投与ががん治療に貢献するのかについて論争されています。

しかし、Moertelらによる試験を含むほとんどの介入試験では、経口投与のみが用いられているのに対し、Cameronらは経口投与と静脈内投与の両方を用いていました。

1)The orthomolecular treatment of cancer II. Clinical trial of high-dose ascorbic acid supplements in advanced human cancer.
2)Supplemental ascorbate in the supportive treatment of cancer: Prolongation of survival times in terminal human cancer.
3)Failure of high-dose vitamin C (ascorbic acid) therapy to benefit patients with advanced cancer. A controlled trial.

つまり正しく比較はできていなかったと言えます。経口投与であればbioavailability の関係で有効血中濃度になるビタミンCは限られてしまうからです。

ビタミンC内服とどれだけ違うのか

ビタミンCの1日最大許容用量の経口摂取(18,000mg/日)をしても、ビタミンCのピーク血漿濃度はわずか220μmol/Lであったのに対し、高濃度ビタミンCの点滴(50,000mg〜100,000mg)では約14,000μmol/Lの血漿濃度になるとの研究結果があります。血漿濃度は約70倍高くなっています。1000μmol/Lを超える濃度では、ビタミンCが一部の癌細胞に毒性を示していますが、正常な細胞には毒性を示していません。

引用;Intravenously administered vitamin C as cancer therapy: three cases

高濃度ビタミンCを点滴投与することでがんの予防ができる可能性が示唆されています。ただし高濃度以外のビタミンCの生理学的濃度(0.1 mmol/L)程度では、腫瘍や正常な細胞には影響を与えません。

引用;Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues

高濃度ビタミンCの作用機序

高濃度ビタミンCは過酸化水素を産生することで活性酸素を中和、酸化ストレスによるDNA損傷を減少させます。

薬理学的ビタミンCは、プロドラッグとして作用することにより、ナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター2(SVCT-2)を介して細胞内L-アスコルビン酸の関与を高め、癌細胞を損傷することがわかっています。

引用;Vitamin C: a concentration-function approach yields pharmacology and therapeutic discoveries

高濃度ビタミンC点滴前に採血が必要

高濃度ビタミンCの施行前に、高濃度ビタミンCで急性溶血発作が起こらないかどうか(G6PD酵素活性)を確認する検査を行います。

引用;Favism and Glucose-6-Phosphate Dehydrogenase Deficiency

高濃度ビタミンCを血管内に投与すると過酸化水素を発生します。しかし血液中では、細胞内外の過酸化水素は赤血球により除去されるシステムになっています。この過酸化水素を除去する過程において、ヘモグロビンの酸化を防ぐ機能が働く必要があります。その条件は、①NAD(P)Hの産生に血糖が利用できること
②還元型グルタチオンが十分に機能されていること
G6PD欠損者ではG6PD(グルコース6リン酸脱水素酵素)が欠損することによって上記条件がそろわず、赤血球膜上の過酸化水素を除去できず溶血してしまいます。

G6PD欠損症:日本人の約0.1~0.5%。X連鎖劣勢遺伝。一度発症すると赤血球が破壊され「溶血性貧血」が体内で起こる。症状としては、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、身体のだるさ(倦怠感)等がある。症状が悪化すると輸血をする必要があり、最悪の場合には命にかかわることにもなる。

高濃度ビタミンC点滴の注意点

空腹時や体調不良であれば点滴をおすすめしません。理由はビタミンCの分子構造がブドウ糖に類似しており、身体が反射的にインスリンの分泌をすることで低血糖症状が出現することがあるからです。症状は15分以内に起こることが多いです。

ビタミンCは分解されると尿中にはデヒドロアスコルビン酸、2,3-ジケトグロン酸、シュウ酸に変化します。排泄量が多く余った場合はそのままの形でも尿中に排泄されます。尿中へのシュウ酸排泄率が300〜400mg/日まで排泄されると高シュウ酸尿症となり尿路結石などのリスクとなりえます。研究報告ではアスコルビン酸(ビタミンC)の投与量が9,000mgに増加してもシュウ酸の尿中排泄率は100mg程度と報告されています。しかし高濃度ともなるとその5倍〜10倍の投与量になりますが、点滴で投与した場合どれくらいが尿中へ排泄されるかは不明です。おそらく代謝されたシュウ酸の尿中排泄量は多くなると思いますが、1回で尿路結石にはならないと思うので美容目的であれば期間を充分あけて行えば問題ないと思います。

さいごに

しかし保健当局(FDA)はがん患者にとって高濃度ビタミンC点滴(HAAT)はあくまで補助的がん治療であり、治療的要素はないとしています。ただ in vitroおよび動物実験では、ビタミンCのがん細胞に対する薬理学的細胞毒性効果を証明されているため、少なくとも癌などに対して免疫力を高める予防的投与は期待できます。