ハイドロキノンとはベンゼン環にヒドロキシ基が結合した二価フェノールのことです。本邦では最も古くから用いられており、60年以上、その美白剤としての臨床及び基礎研究について多くの論文が報告されています。ただし化粧品への配合は認められているものの、発癌性物質であるため(ヒトでは因果関係は明らかにはされていないが少なくともメラノサイトへの細胞毒性はある)制限があります。有効成分としては厚生労働省より認可されていないため、医薬部外品としては配合できません。さらにハイドロキノンは医薬品としても薬機法で承認されていないので市販(OTC医薬品として)でも買うことができません。ただし、医療現場では患者の病態や症状によって必要と判断された場合に、医薬品として薬価基準に収載のない薬物を製剤化した上で院内製剤・薬局製剤として患者に用いるケースがあり、皮膚科や美容形成外科などではしみ治療薬として用いています。
効果・効能
化粧品配合上限濃度である2%を超えると炎症後の色素沈着、肝斑、雀卵斑などの色素沈着改善作用が報告されています。この研究では2%と5%での効能を比較していますが2%でも十分な美白効果が得られています。ハイドロキノンの美白作用機序はチロシナーゼ(TYR)阻害作用と言われています。
引用; Modulating skin colour: role of the thioredoxin and glutathione systems in regulating melanogenesis
作用機序
ハイドロキノン分子がチロシン構造に類似しており、チロシナーゼ酵素のブロッカーとしてアンタゴニストの働きをしている可能性が示唆されています。つまり本来であればチロシンがメラニンへ誘導されますが、代わりにハイドロキノンがチロシナーゼと結合しメラノジェネシスを阻害します。
合併症
紫外線曝露や長期間の外用により白斑形成や黒変症(Ochronosis(オクロノーシス))が発症すると言われています。オクロノーシスとはハイドロキノンが真皮成分に入り込み、その構造を変性させたり、色素沈着を引き起こすことを言います。
引用;Final amended safety assessment of hydroquinone as used in cosmetics
注意点
しみ治療ではトレチノインと併用することが多いが、トレチノインの場合は耐性ができるため休薬期間を設けているのに対し、ハイドロキノンは3ヶ月以上連続で使用すると効果はプラトーに達するが長期使用により合併症が出るリスクが高くなることから1クールは3ヶ月以内とし長くても3クールとしている場合が多いです。
肝斑であれば、トレチノイン4週間、ハイドロキノン10週間を1クールとして最大3クールまで行います。