レーザー光について
レーザー (LASER:Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)とは電磁波の一種で、単一波長の光(単色の光)を増幅させて熱エネルギーに変換する機械です。発せられたレーザー光はほとんど広がることなくまっすぐに進みます。さらにレーザーは光の波どうしの山と山が時間的にきれいにそろっています。
レーザー光とは下記図の幅広い波長の光のなかで1つの波長に集約し強くしたもの
光は波長が400nm未満の紫外線、400〜780nmの可視光線、780nm以上の赤外線に分類されます。
レーザーの特徴
レーザーは選択的光熱融解理論(selective photothermolysis)を利用しています。つまり物質には吸収しやすい波長(光)が存在し、レーザー治療はこの物質それぞれの吸収率の差を利用しています。これを吸光度といいます。たとえば赤ら顔や血管腫でターゲットなるヘモグロビンは500〜600nmの波長を吸収しやすくDyeレーザーを選択し、脱毛やしみでターゲットとなるメラニンは1,000nm未満の波長を吸収しやすいためKTP、Dye、Ruby、Alex、YAGレーザーを選択します。ただし1000nm以下ではメラニンの吸光度とヘモグロビン・血管の吸光度も考慮しないとしみ治療においては効率が悪かったり合併症を起こしてしまいます。
レーザー治療においては吸光度、波長、パルス幅、照射エネルギーの4つが重要な要素となります。レーザー光はターゲットが破壊される程度の波長(深達度)と照射エネルギー(破壊力)をもっていることが重要ですが、周囲の正常組織は破壊しない程度のパルス幅(衝撃力)とすることが理想的です。
しみ治療におけるレーザー
以上のことからシミ治療においては合併症(色素沈着や萎縮性瘢痕)を少なくするにはパルス幅を短くすること、つまり現状最速の照射時間幅であるピコ秒レーザーを使用することがダウンタイムを少なくする治療となります。一方でダウンタイムを無視すればパルス幅が長い従来のナノ秒レーザーの方がしみ除去の効率は高いと言えます。
その上でメラニンの吸光度がある程度高い波長が出せるレーザーとしてKTP;532nm、Dye;585nm、Ruby;694nm、Alex;755nmが候補となりますが、しみ治療においてはヘモグロビンへの吸収率が高いと深達度も低下することに加え、血管破壊による紫斑や瘢痕形成のリスクが高くなるのでDyeレーザーは使いません(血管腫や赤ら顔の治療として)。理論上はヘモグロビンへの吸光度が最も低く、コラーゲンへの吸収率が低く,メラニン吸光度が高いRubyのピコ秒レーザーがあれば最強ですが市場にはまだありません。700nm前後の波長が出せるレーザーがシミ治療においては最強です。
Qスイッチ◯◯◯レーザー
ピコ秒レーザーと比較されるQスイッチという言葉について説明します。普通のレーザーは共振器の中で光が発生し,その両側にあるミラーで繰り返し反射することでエネルギーが増します。そしてエネルギーが一定に達すると透過ミラーによりレーザー光として発振されます。そしてミリ秒 (ms=10-3s) から百マイクロ秒 (us=10-6s) 程度のdurationのものが多いです。Qスイッチレーザーは電気的なシャッターを用いて、光をため込み一気に放出させ duration を20ns秒 (ns=10-9s)程度まで短くした非常に強い光を発します。ピークパワーが高いので真皮まで十分熱が加わるので真皮内病変のADMに特に有効なレーザーとなります。
皮膚科治療ではQスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー、Qスイッチ/Nd: YAGレーザーの3種類が実用化されています。
Qスイッチレーザーをさらにdurationを短縮したのがピコレーザーです。durationは数百ピコ秒 (ps=10-12s) で、刺青の治療成績が大きく向上していると報告があります。
レーザーとIPL(フォトフェイシャル)の違い
レーザー | フォトフェイシャル | |
波長 | 単一波長 | 幅広い波長 |
パルス幅 | ns,ps | ms |
ターゲット | ・メラニン | ・メラニン ・ヘモグロビン ・真皮線維芽細胞 |
IPLは治療後の処置は特に必要なし,しみの部位が少し濃くなり小さなmicrocrust(痂皮)が形成され,1週間程度で脱落しシミが薄くなります。このダウンタイムの間はレーザー・フォトフェイシャルいずれもピーリングやマッサージなどは避けることで刺激されずに色素沈着のリスクが下がります。