レーザーとIPLの物理学的な違い
光は波長が400nm未満の紫外線、400〜780nmの可視光線、780nm以上の赤外線に分類されます。
レーザー光について
レーザー (LASER:Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)とは電磁波の一種で、自然界には存在しない単一波長の光(単色の光)を人工的に増幅させて熱エネルギーに変換することができる光です。上記図にある通り発せられたレーザー光はほとんど広がることなくまっすぐに進みます。さらにレーザーは光の波どうしの山と山が時間的にきれいにそろっています。生体内ではメラニン、ヘモグロビン、水分などのさまざまな物質があり、これらはそれぞれに吸収しやすい波長(光)があるため、治療を行う際には治療対象に合わせて波長(光)を選ぶことになります。
レーザー光とは上記図の幅広い波長の光のなかで1つの波長に集約し強くしたもの
IPLについて
レーザーは単一波長(1種類の光)の非常に強い光ですが、IPL(Intense Pulsed Light)は主に太陽光に近い分光分布を有するキセノンランプを光源として、短波長領域を各種フィルターでカットしてパルス発振する機械です。フィルターによって特性を変えることができますが、基本的にレーザーと異なり、広い分光分布(複数波長、つまりいくつかの色が混じった光)を持っています。これによりレーザーと比較し幅広い効果があると言われます。
ランプの特性上、ミリ秒単位での発振となります。近赤外線領域を主とした分光分布のものでは、その水分吸収特性から真皮への光熱作用を生じさせます。そして上記図の通りレーザーと違い発せられた光はあちこちに広がります。さらに光はレーザーと違いは光の波どうしの山と山が時間的にそろっていません。
IPLは上記図の幅広い波長の光をまとめて集約し強くしたもの
引用;エビデンスに基づく美容皮膚科医療.2019;vol1.159:247
まとめ①
レーザーは幅広い色から1つだけ選びそれを集約し強くしたものでIPLは複数の色をまとめて集約し強くしたものです。これにより光としての透過性や減衰率が異なります。しかしどちらも色素に吸収されて熱を発散して効果を出す点は同じです。
レーザーとIPLの治療的な違い
IPL治療
濃いシミを薄くする作用はありますが、シミそのものを消し去ることはできません。ただし単一波長の光ではなく複数の波長の光を含んでいるため、メラニン以外の様々なものにも反応し、シミの改善以外のリジュビネーション効果も期待できます。
レーザー治療
レーザーは選択的光熱融解理論(selective photothermolysis)を利用しています。つまり物質には吸収しやすい波長(光)が存在し、レーザー治療はこの物質それぞれの吸収率の差を利用しています。これを吸光度といいます。たとえば赤ら顔や血管腫でターゲットなるヘモグロビンは500〜600nmの波長を吸収しやすくDyeレーザーを選択し、脱毛やシミでターゲットとなるメラニンは1,000nm未満の波長を吸収しやすいためKTP、Dye、Ruby、Alex、YAGレーザーを選択します。ただし1000nm以下ではメラニンの吸光度とヘモグロビン・血管の吸光度も考慮しないとシミ治療においては効率が悪かったり合併症を出てきます。
まとめ②
上記で説明した通りレーザーとIPLはターゲットが単色か複数色かでまず異なります。ただしどちらも色素に吸収されて熱を発散して効果を出す点は同じなので脱毛やシミ治療においてはどちらも効果はあります。一方で血管腫などターゲットがヘモグロビン色素に限定されている場合はレーザーのような狭域スペクトラムを選択するのが治療の効率としては良いです。
治療の使い分け
手背の日光性色素斑は顔面よりも角化傾向が強い病変が多く、レーザーでは色素沈着が残りやすくIPLが使いやすいです。