ニコチン酸アミド
ニコチン酸の生理学的活性型であるニコチン酸アミド(niacinamide)は分子量122.12(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します。
美白効果としてはP&G、シワ改善効果としてコーセーの申請により医薬部外品成分として厚生労働省に承認された成分です。
ケラチノサイト増殖・分化促進
皮膚ケラチノサイトを増殖させ分化を促進します。表皮細胞の分化マーカーであるインボルクリンとフィラグリン産生量も増加します。これによりターンオーバーを正常に保ちます。
美白効果(メラノソーム移送阻害)
様々なニコチン酸アミドのメラニンに対する効果の検証が報告されています。ヒト皮膚色素沈着における有用性検証によると、メラノソーム移送阻害による色素沈着抑制作用が認められています。本邦ではP&Gの申請によって2007年に医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認されています。
N-Nicotinoyl dopamine inhibits skin pigmentation by suppressing of melanosome transfer
The effect of niacinamide on reducing cutaneous pigmentation and suppression of melanosome transfer
箱崎 智洋.ニコチン酸アミドの美白効果とそのメカニズム;Fragrance Journal(33)(5),55-59.
セラミド合成促進
表皮でセリンパルミトイルトランフェーゼを活性化させることでセラミドが合成され、皮膚バリア機能が向上すると報告されています。
Nicotinic acid/niacinamide and the skin
丹野 修.De novoセラミド合成促進による表皮バリア機能の改善;Fragrance Journal(27)(10),23-28.
線維芽細胞増殖・コラーゲン産生促進
培養皮膚の表面にニコチン酸アミドを塗布して24時間培養した研究では、細胞外基質成分であるフィラグリンⅠ、フィブロネクチン、Ⅰ型コラーゲン、Ⅲ型コラーゲンを合成促進するmRNA量が増加したと報告があります。
まとめ
ニコチン酸アミドは表皮に対してケラチノサイトを刺激し細胞の増殖と分化を促進することで、表皮のターンオーバーを促進するだけでなく、セラミド合成を促し正常な角質層を保ちます。さらにメラノソームの移送阻害作用もあるため、しみ対策にもなります。真皮に対しては真皮線維芽細胞を刺激し、細胞の増殖とコラーゲン産生を促進しrejuvenation を図ります。したがって表皮と真皮繊維が両方へアプローチすることでシワが改善されると推定されます。
ナイアシン(B3)
ナイアシン(ビタミンB3)は体内で合成できないので食事から摂取しなければならない補酵素です。単調な食事で欠乏すると皮膚炎・下痢・認知症になりえます。ナイアシンアミドは、生体においてナイアシンアミドとして存在するか、カルボニル化合物を合成する際に必要な補酵素としてNAD(Nicotinamide adenine dinucleotide)やNADP(Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)を構成する成分として存在しています。これらは酸化還元反応に関与することで、細胞内のエネルギー(ATP)産生に重要な役割を果たしています。
引用;Tatsuo Sakai , et al.人体の正常構造と機能.日本医事新報社 2012;vol.2:736:879.
酸化還元反応で用いられるビタミン
酸化反応(異化反応:細胞にエネルギーATPを供給するために起こる生分解反応)を触媒する酵素の補酵素として用いられる最も一般的なものは酸化剤であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)です。NAD+が基質を酸化すると自身はNADHとなります。
還元反応(同化反応:生体内で必要とされるために起こる合成反応)を触媒する酵素の補酵素として用いられる最も一般的なものは還元剤であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)です。NADPHが基質を還元すると自身はNADP+となります。
NAD+はカルボニル化合物を合成する時に使用する補酵素