サーマクールとは高周波を使ったたるみ治療です。単極型高周波による代表的な機器は米国 SOLTA medical 社製 Thermage®(サーマクール)です。
単極型高周波
ラジオ波により、表皮から皮下脂肪まで全体的にゆっくり均一に加熱しコラーゲンを変性させます。皮膚が収縮 (skin-tightening)、創傷治癒機転によるコラーゲン・ヒアルロン酸などの再構築(リモデリング) が生じます。最も高温となる層は真皮下層です。この非侵襲的な創傷治癒機転は基底細胞や血管の損傷を伴いません。
直後の反応
照射直後ではとくに真皮が熱によって浮腫状の変化を起こし、加齢によって減少した水分を一時的に改善します。さらに新型のFLXではより浅層まで熱が発生するように設計されていることなどから引き締め効果や肌の張り感が直後から感じることができます。真皮加熱による引き締め効果は直後の反応であり、真の効果は徐々に(3週間後〜)出てきます。
3週間後〜
約3週後より創傷治癒機転による組織の再構築による効果が発現し、その後は半年程度かけて安定した状態となります。10ヶ月程度持続すると言われており、その後も完全にもとに戻ることはなく、内部に生じた瘢痕性の変化は軽微ではあるものの組織学的に残存します。
RF (radiofrequency)とは
RFは高周波またはラジオ波と呼ばれています。高周波電流による加熱作用によって効果をもたらすものです。レーザーや光と異なり、メラニンや血管に影響せずに人体を加熱します。高周波は体内や体表を通り深部を加熱しその熱作用により生体内へさまざまな効果をもたらし、体外へ放出されます。
治療のコツ
治療のコツとしては皮膚を固定している支持靱帯の方向に沿って引き上げていくように照射すると良いです。疼痛管理を優先して低出力での照射を行うと効果が格段に落ちます。照射のスピードもあまりゆっくり行うと蓄熱されません。同じ領域を反復して照射します。
治療の限界
細胞レベルでの活性化による「若返り」ではなく、あくまで表層の変化による引き締め効果です。これは加齢性変化というのは皮下脂肪の下垂によるたるみや骨の萎縮も関係しているため、表層を引き締めただけで加齢性変化のすべてを解決出来ないからです。見た目は実際にはボリュームや輪郭のほうが大きな比重を占めています。
単極型高周波(サーマクール)は組織を熱破壊再構築することが組織学的に証明され、理論も確立されています。skin-tightening という意味でのエビデンスレベルは1(最高レベル)といえるが、「たるみ」 という形態的変化には引きしめ効果だけで完璧な結果を出すことはできないため、エビデンスレベルは2となっています。
サーマクール以外のRF治療としてradiative 式高周波がありますが、明確な熱破壊を伴わず、主観的な満足度に依存する機器であり、施術者の技術的な差も生じやすいです。臨床的な満足度は高いが根拠がある治療法ではないです。
HIFUとの違い
肌の緩みやたるみに対してサーマクールが世界で初めてのタイトニング医療機器として使用され始めてから20年程経ち、その後HIFUが誕生しました。
HIFUは、超音波を収束させて微細な凝固点を各層(表皮、真皮、脂肪、SMAS)に作りコラーゲン収縮を点状に起こします。皮膚をホチキスのように癒着させることでリフトアップ効果を得るようなイメージです。
ThermaCoolは、チップ電極直下にラジオ波を当てることで、表皮から皮下脂肪まで全体的にゆっくり均一に加熱しコラーゲンを変性させます。皮下の立体構造上、均一なタイトニング効果が得られます。
サーマクールのRFエネルギーの照射による皮膚と皮下組織の組織学的変化については、Zelicksonらの研究で明らかになっています。そして彼らによると、サーマクールのRF照射で最も熱変性を生じる部位は真皮下層〜皮下組織上層のコラーゲン線維であることも報告しています。
「料理に例えると一気に高温加熱するHIFU、ゆっくりと低温で加熱するサーマクール、ゆっくり低温で加熱した方が内部まで均一に加熱され、柔らかく弾力のある仕上がりになります。」
やや脂肪が多めで中顔面から下顔面のボリュームを減らしたい方がいい適応
たるみ治療においては6か月に1回の高周波のサーマクール、3か月に1回の超音波のULTRAcel Q+が理想の治療プランです。
Thermage®︎FLX system
2002年にサーマクールがThermaCool TCTMとして米国FDAの認可を取得し、世界初のRFを用いた非侵襲タイトニング機器として発売されました。そして2017年に4世代目のFLXが発売されました。これは照射ごとに皮膚のインピーダンスを測定し、治療部位の皮膚の状態に合わせて、照射パラメーターを変えることで、より痛みの少ない再現性のある治療を可能としました。
まとめ
肌の緩みやたるみに対してサーマクールが世界で初めてのタイトニング医療機器として使用され始めてから20年程経ち、その後HIFUが誕生しました。HIFUは、超音波を収束させて微細な凝固点を皮膚や筋膜に作るので、コラーゲン収縮や創傷治癒起点が点状に起こります。皮膚をホチキスのように癒着させることで効果を得るようなイメージです。一方でサーマクールはチップ電極直下に均一な損傷を与えるので、「皮下の立体構造上、均一なタイトニング効果が得られます」