シミ

美白有効成分

美白有効成分(医薬部外品への配合が認められている)

美白剤はシミ、そばかす、日焼け、肝斑等の皮膚の色素沈着に有効であることが分かっています。皮膚の色素沈着は、表皮細胞に存在する色素細胞(メラノサイト)が増殖・活性化することにより、メラノサイトのメラニン色素生成が著しく亢進し、必要以上にメラニンが生成され、生成したメラニン色素が隣接細胞に拡散することで生じています。<メラニンについての詳細はこちら>メラノサイトを増殖・活性化させる原因は、炎症、ホルモンのバランス、遺伝的要因等、様々ですが紫外線の影響により助長されます。したがって、肌のシミ、ソバカスや黒化を防止又は改善するための方法として、下記6種類の作用機序を有すると期待される美白成分が提案され、厚生労働省に美白有効成分として承認されています。

引用;Skin Whitening Products and Their Effects

引用; Modulating skin colour: role of the thioredoxin and glutathione systems in regulating melanogenesis

ただし、必ずしも医薬部外品に承認された美白有効成分を配合した薬用化粧品のほうが承認されていない美白成分配合化粧品よりも効果が高いというわけではありません。というのも薬用化粧品は国によって色素沈着抑制効果が認められる配合範囲量が規定されているため、濃度が製造・販売会社に委ねられている化粧品に比べると配合量が少ない可能性があるからです。

①チロシナーゼ活性を阻害する成分

APM、APS、AA2G、VCエチル、VCIP
コウジ酸、エラグ酸、リノール酸
アルブチン、ルシノール、4MSK、マグノリグナン

②TRP-1/2活性を阻害する成分

コウジ酸、ルシノール、VCエチル

③メラノサイト活性化因子を阻害する成分

カモミラET、トラネキサム酸

④メラニンを還元して淡色化させる成分

APM、APS、AA2G、VCIP

⑤ターンオーバーを促進してメラニン排出させる成分

エナジーシグナルAMP、デクスパンテノール、プラセンタエキス

⑥メラノソームの転送阻害によリ色素沈着を抑制する成分

ニコチン酸アミド、デクスパンテノール

厚生労働省に美白有効成分として承認されてはいないが、美白効果を期待できる成分としてアゼライン酸やAPPS、APIS、GOVCなどのビタミンC誘導体があります。その他には医薬品としてトレチノインやハイドロキノンがあります。

アゼライン酸についてはこちら

各有効成分について

APM,APS,AA2G,VCエチル,VCIP

ビタミンC誘導体についてはこちら

コウジ酸

分子量は142.11(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

三省製薬の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

コウジ酸はみそ、醤油、日本酒などの醸造に用いられてきた麹の発酵液の中から分離同定されたγ-ピロン化合物であり、チロシナーゼの銅イオンをキレート化し、その活性を阻害します。また、メラニン重合体形成過程において、メラニンポリマー生成の阻害効果も有します。チロシナーゼの活性阻害とともにTRP-2活性も阻害します。さらに紫外線誘導色素沈着、肝斑、老人性色素斑などに有効と報告されています。

引用;コウジ酸のメラニン生成抑制作用と各種色素沈着症に対する治療効果

エラグ酸

分子量は302.19(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

ライオンの申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

エラグ酸はイチゴやリンゴなどの植物中に広く存在するポリフェノール化合物であり、抗酸化作用と金属イオンのキレート作用を示します。キレート作用によりチロシナーゼと銅の結合を阻害しその活性を抑制します。また、紫外線誘導色素沈着防止効果を示すことが報告されています。

引用;立花新一.エラグ酸のメラニン生成抑制効果.FRAGRANCE JOURNAL,9:37-42,1997.

リノール酸

分子量は280.4(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

サンスターの申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

リノール酸は不飽和脂肪酸の一種であるが、チロシナーゼタンパクの分解を促進することに よるチロシナーゼ活性抑制作用を有します。また、リポソーム化リノール酸水溶性ジェル製剤の肝斑に対する有効性が報告されています。

引用;Fatty acids regulate pigmentation via proteasomal degradation of tyrosinase: a new aspect of ubiquitin-proteasome function

アルブチン

分子量は272(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

資生堂の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

アルブチンは、コケモモやウワウルシなどの植物に含まれる天然型フェノール性配糖体、すなわち、ハイドロキノンとグルコースがβ結合したハイドロキノン誘導体であり、チロシナーゼの活性阻害作用によりメラニン生成を抑制します。また、紫外線によるシミ防止効果を示すことが知られています。

アルブチンは美白効果が認められているものの配糖体であり化学的に不安定であるという問題があります。

引用;前田憲寿.アルブチンのメラニン生成抑制機序と美白効果.FRAGRANCE JOURNAL(増刊),14:127-132,1995.

引用;アルブチンのメラニン生成抑制作用 B16メラノーマ培養細胞による生化学的研究

ルシノール

分子量は166.22(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

ポーラ化成工業の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

ルシノールは、レゾルシンの誘導体であり、レゾルシンの4位にブチル基が導入された4-n-ブチルレゾルシノールである。ルシノールは、チロシナーゼの活性阻害とともにTRP-1活性を阻害します。また、紫外線誘導色素沈着および肝斑に有効であると報告されています。

引用;片桐崇行.4-n-ブチルレゾルシノー ル(ルシノール®)のメラニン産生抑制作用とヒト色素沈着に対する有効性.粧技誌,35:42-49,2001.

4MSK

分子量は206.24(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

資生堂の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

サリチル酸の誘導体である4-メトキシサリチル酸カリウム塩(potassium 4-methoxysalicylate)は、チロシナーゼ活性阻害により色素沈着抑制効果を示します。

引用;藤原留美子.4-メトキシサリチル酸カリウム塩の作用と新たな美白アプローチの可能性.FRAGRANCE JOURNAL,36(9):37-41,2008.

カモミラET

花王の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

カミツレエキス(chamomile extract)はキク科植物カミツレの抽出物です。カミツレは一般的にはカモミールという名称で親しまれ食用として用いられてきました。紫外線に暴露された表皮ケラチノサイトから分泌されるエンドセリン1がメラノサイトを活性化する機構が明らかにされており、カミツレエキスはエンドセリン1による活性化反応を抑制します。また、紫外線誘導色素沈着および肝斑に有効であると報告されています。

引用①;The role of endothelin-1 in epidermal hyperpigmentation and signaling mechanisms of mitogenesis and melanogenesis
引用②;川島 眞.紫外線誘導色素沈着に対するカミツレエキスの抑制効果.西日皮,61:682–685,1999.

トラネキサム酸

分子量は157.21(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

資生堂の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

トラネキサム酸は内服は肝斑の王道の治療薬です。薬効は①抗線溶効果②抗炎症作用、抗アレルギー作用③メラニン生成抑制です。

トラネキサム酸の外用については、分子量が157(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易に浸透します。肝斑以外でも重症度の高いアトピー性皮膚炎ほどプラスミン活性が高いことから、肌荒れなどバリア機能が低下している場合にも、プラスミンの活性を阻害することは、アレルギー性炎症の抑制において重要なアプローチといえます。肝斑、肌荒れ(ニキビも)、皮膚炎、紫外線誘導性色素沈着によリ誘導される新規の色素沈着にはいい適応です。

トラネキサム酸について

 エナジーシグナルAMP

分子量は391.19(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

大塚製薬の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

アデノシン一リン酸二ナトリウム(AMP2Na)は、エネルギー代謝を高めて表皮のターンオーバーを促し、過剰のメラニンを有するケラチノサイトの排出を促進することにより美白効果を示します。また、肝斑に有効であったと報告されています。

引用①;Effects of adenosine 5′-monophosphate on epidermal turnover
引用②;川島 眞.表皮ターンオーバーの促進に基づく色素沈着の改善.アデノシン一リン酸二ナトリウムの肝斑に対する臨床効果.臨皮,62:250–257,2008.

ニコチン酸アミド

分子量は122.12(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

美白効果としてはP&G、シワ改善効果としてはコーセーの申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

ニコチン酸の生理学的活性型であるニコチン酸アミド(niacinamide)は、メラノソームのメラノサイトからケラチノサイトへの輸送を抑制することにより美白効果を示します。また、肝斑、老人性色素斑、雀卵斑に有効であると報告されています。

引用;The effect of niacinamide on reducing cutaneous pigmentation and suppression of melanosome transfer

 デクスパンテノール

分子量は205.25(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

ポーラ化成工業の申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。美白有効成分は1983年の武田薬品工業の申請によって医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認されたリン酸Lアスコルビルマグネシウム以来、さまざまな美白有効成分が承認されてきました。しかし美白有効成分の中には白斑症などの副作用を起こす事例が報告され、2013年以降は審査基準が厳しくなりました。承認取得のハードルが高くなってから初の新規美白有効成分が2018年12月にポーラ化成工業から開発されたのがデクスパンテノール(PCE-DP)です。PCE-DPという名前は、その作用機序と成分名から由来しPriming(爆発的に高める)、Cell(細胞)、Energy(エネルギー)の頭文字から取ったそうです。

引用;新規美白有効成分PCE-DP.POLA ORBIS HOLDINGS

マグノリグナン

分子量は270.3(<500)であり通常のスキンケア化粧品に含まれていた場合は容易には浸透します

カネボウの申請により医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

マグノリグナンは、5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオールと表現されるプロピルフェノールの二量体です。マグノリグナンのメラニン生成抑制作用のメカニズムは転写後の過程でチロシナーゼタンパク質量を減少させることに起因すると考えられています。他の美白剤のチロシナーゼー活性阻害とは若干違う作用のようです。

引用;横田 朋宏・佐々木 稔(2006)「マグノリグナンのチロシナーゼ成熟阻害作用とその美白効果」Fragrance Journal(34)(2),80-83

プラセンタエキス

プラセンタの歴史は古く70年近くから使用されています。当初からは注射薬として使用されていましたが、近年化粧品においても使用され医薬部外品として承認されています。2000年代からチロシナーゼ阻害作用や色素沈着抑制効果があることが検証されてきました。2015年にはプラセンタエキスに抗酸化作用、抗炎症効果、ターンオーバー促進効果が認められ、2016年にはコラーゲンやエラスチンを産生する線維芽細胞の増殖促進作用が報告されました。さらに高圧抽出プラセンタエキスであれば通常のプラセンタエキスと違い角質水分量増加から保湿作用も示すことが報告されています。安全性について、頻用されるブタ由来プラセンタエキスは、アレルギーの原因物質やステロイドホルモンは除去されており通常使用下において、アレルギー反応はほとんどないと言われています。

Anti-inflammatory Effect of the Water-Soluble Portion of Porcine Placental Extract in Lipopolysaccharide-Stimulated RAW264.7 Murine Macrophage Cells

Placental extracts induce the expression of antioxidant enzyme genes and suppress melanogenesis in B16 melanoma cells

株式会社ニチレイバイオサイエンス(2017)「胎盤由来成分を含有するシワ改善用組成物」特開2017-114868.

永峰 賢一, 他(2001)「ブタ由来水溶性プラセンタエキスの開発とその特性」Fragrance Journal(29)(11),34-41.

髙林 久美子(2018)「製剤におけるプラセンタエキス有用性試験」Fragrance Journal(46)(4),52-55.

小松 靖彦, 他(2016)「プラセンタエキスの効果を動画で見る – マクロファージ機能低下防止と線維芽細胞増殖促進」Fragrance Journal(44)(6),47-54.